※本記事は派遣会社(経営者・管理者・人事労務担当者)向けに、2025年秋に想定される「マイカー通勤手当の非課税枠改正」を、実務レベルで徹底解説した内容です。
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## 1. 2025年、マイカー通勤手当の“非課税枠改正”が注目される理由
2025年に入り、マイカー通勤手当の非課税枠を引き上げる方針が政府から報道されました。
続いて人事院が8月に行った勧告では、片道10km以上の区分で非課税枠を引き上げる案が提示されています。
背景には、以下のような社会状況があります。
● ガソリン価格の高止まり
● 車通勤が必須となる地方エリアの生活実態
● 企業・従業員双方にとって通勤コストが上昇している現状
派遣会社にとって、マイカー通勤は“例外”ではなく“日常”。
そのため、この改正は現場の派遣スタッフ・派遣先・自社の運用すべてに影響を与える重要な話題となります。
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## 2. そもそも「非課税枠」とは何か?【基本の整理】
通勤手当には「ここまでなら非課税」という限度額が決められています。
この非課税枠は、所得税法および国税庁の通達により、片道距離に応じて細かく定義されています。
例:現行の一部区分
・4〜6km:4,200円
・10〜15km:6,500円
・15〜25km:11,300円
この非課税枠を超えて支給された金額は、課税対象となり、
● 所得税
● 復興特別所得税
● 住民税
などが加算され、スタッフの手取りにも影響します。
つまり、非課税枠の改正は「スタッフの手取り」に直結する制度です。
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## 3. 人事院の勧告で示された「2025年の引き上げ案」
人事院の発表によれば、10km以上の区分を中心に非課税枠の引き上げが見込まれています。
例:片道15km(勧告案ベースのイメージ)
現行:11,300円
改正後:17,000円前後になる可能性
これは約5,700円の大幅アップ。
10〜20kmで通勤するスタッフの多い派遣会社にとって、影響は大きいと言えるでしょう。
一方で10km未満の区分は据え置きと予測されています。
短距離のスタッフは大きな変化がない点が特徴です。
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## 4. 非課税枠が引き上げられると「手取り」はどう変わる?
非課税枠が上がった場合、手取りに変化が起こる理由は2つあります。
### (1)課税対象額が減り、手取りが増える
非課税枠をわずかに超えて課税されていたスタッフは、その部分が非課税化されるため、所得税や住民税が減り、手取りが増えます。
例:
現行 → 非課税枠11,300円
支給額 → 13,000円
差額1,700円が課税
仮に非課税枠が17,000円に引き上げられれば、課税対象はゼロになります。
### (2)支給額そのものが増える可能性
企業によっては「非課税枠まで支給する」ルールを採用しています。
その場合、枠が広がる=支給額を増やす運用になることがあります。
ただし支給額が増えると、社会保険料の算定に影響し、手取りが必ずしも大きく増えるとは限りません。
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## 5. 派遣会社にとって実務で大きな影響が出るポイント
2025年の改正は、派遣会社に特有の実務負担を生じさせます。
ここではその主要ポイントを整理します。
### ● ① 支給ルール(就業規則・社内規程)の確認
「非課税枠まで支給」
「距離に応じて一定額支給」
「派遣先規程に準拠」
いずれの方式でも、今回の改正によってチェックが必要です。
### ● ② 派遣先との取り決めの確認
派遣会社では、
・通勤手当を誰が負担するのか
・派遣料金に含むのか、別途支給なのか
これらが案件ごとに異なるため、改正内容に応じて派遣先との調整が必要です。
### ● ③ 給与計算システムの更新
非課税限度額が改正される場合、給与システムの更新作業が必須です。
距離区分の変更やマスター情報の更新など、タイミングを誤ると給与計算のミスにつながります。
### ● ④ 派遣スタッフ対応
最も問い合わせが増えるのがここです。
・「手取りは増えるの?」
・「うちは通勤手当が上がるの?」
・「適用はいつから?」
正確な説明と、誤解を避ける案内文の作成は必須です。
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## 6. 「支給額を必ず増やす必要がある」と誤解されがちなポイント
スタッフから最も多い誤解が、
「非課税枠が増える=支給額を上げないといけない」
というもの。
結論:**支給額を上げる義務はありません。**
非課税枠はあくまで“税金のルール”。
企業の支給額は“就業規則・契約”で定められます。
ここを丁寧に説明しないと、「説明不足だった」とトラブルの種になってしまいます。
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## 7. 【年末調整】実務担当者が注意すべきポイント
国税庁はすでに「改正が行われる場合、年末調整に影響する可能性がある」と示唆しています。
派遣会社が特に注意すべきは以下の点です。
● 通勤手当の非課税判定が変わる
● 給与支払報告書の金額調整が必要
● 各スタッフの距離判定が正しいか再確認
● 支給履歴との整合性チェック
派遣社員の数が多い会社では、ここが最も負担となる場合があります。
早めに「チェックリスト」を作っておくと混乱を防ぎやすくなります。
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## 8. 【派遣スタッフへの説明】誤解を防ぐ伝え方
制度改正の時期は、スタッフが不安を感じやすいタイミングです。
以下の3点を中心に案内を行うとスムーズです。
1. 今回は「非課税枠」の変更であり、必ず支給額が増えるわけではない
2. 手取りが増えるケースもあるが、個人差がある
3. 実施時期が確定次第、改めて案内する
特に「支給額が増えるかどうか」は誤解を生みやすい部分ですので、明確にしておく必要があります。
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## 9. 【派遣先への説明】社外調整で重要な論点
派遣先も制度改正の影響を受ける可能性があります。
● 派遣料金に通勤手当を含めているか
● 交通費の扱いが派遣先規程に連動しているか
● 契約更新のタイミングがいつか
この3つは必ず確認しておきたいポイントです。
派遣先側の制度が変われば、派遣会社は必ず再調整が必要になります。
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## 10. 最後に:制度改正は“派遣会社の信頼を高めるチャンス”
制度改正は業務負担が増えるタイミングですが、同時に“信頼を積み上げる好機”でもあります。
・正確でわかりやすい情報提供
・派遣先への丁寧な説明
・スタッフの疑問に寄り添った対応
・社内規程や運用ルールの透明化
こうしたひとつひとつの取り組みが、
「この派遣会社は安心して任せられる」
という評価につながります。
2025年の改正は、派遣会社にとって避けては通れないテーマです。
動向を注視しつつ、早めの準備で安心できる運用を作っていきましょう。
実務対応で不安がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。
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【参照記事】
【参照】
国税庁 「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」
人事院 「報告文・勧告文」

