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はじめに|人手不足なのに派遣会社が倒産する理由
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「人が足りない」「採用できない」
多くの企業がそう嘆く一方で、2025年に入り、人材派遣会社の倒産が過去最多ペースで増えています。
派遣会社の立場から見れば、
「人手不足なのだから、派遣のニーズは高いはず」
「なぜ今、派遣会社が潰れるのか」
と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
社会保険労務士として派遣会社の労務相談や制度対応に関わる中で感じるのは、今回の倒産増加は“突発的な不況”ではなく、長年積み重なってきた構造問題が一気に表面化した結果だということです。
本記事では、派遣会社倒産が急増している背景を整理しながら、派遣業界がいま迎えている「転換点」について、社労士の視点で読み解いていきます。
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派遣会社の倒産は「異常」ではない
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帝国データバンクによると、2025年1月〜8月の労働者派遣業の倒産は59件。
このペースが続けば、年間90件前後に達し、過去最多を更新する可能性が高いとされています。
数字だけを見ると、「派遣業界はもう限界なのでは」と感じるかもしれません。
しかし重要なのは、倒産が増えている理由を正しく捉えることです。
実は今回の倒産増加は、
・派遣という仕組みが不要になった
・派遣需要が急激に減った
からではありません。
むしろ背景にあるのは、
「市場規模が伸びない中で、事業者数だけが多すぎた」
という、構造的な問題です。
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派遣市場は意外と小さい|派遣社員は雇用の3%未満
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世間では「派遣社員=非正規雇用の中心」というイメージが根強くあります。
しかし、実際のデータを見ると、この認識は大きく異なります。
総務省の労働力調査によれば、
・派遣社員は非正規雇用全体の1割未満
・全雇用者に占める割合は3%未満
で、しかもこの数字は長年ほぼ横ばいです。
つまり、派遣という働き方は日本の労働市場において決して主流ではなく、規模の限られた「ニッチ市場」なのです。
この前提を押さえずに倒産問題を見ると、
「人手不足なのに派遣会社が潰れるのはおかしい」
という誤解が生まれてしまいます。
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事業所4万超えの現実|派遣業界はすでに飽和している
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現在、日本の労働者派遣事業所は4万以上あるとされています。
一方で、派遣市場の規模はアメリカの半分以下とも言われています。
市場が拡大しない中で、
・事業者数だけが増え続けた
・限られた派遣需要を奪い合う
という状態が長年続いてきました。
成長市場であれば、新規参入が増えても全体で吸収できます。
しかし、横ばい市場ではそうはいきません。
結果として起きるのが、
「価格競争」
「マージンの圧縮」
「体力のない会社からの退出」
です。
今回の倒産増加は、派遣業界が縮小しているというよりも、「過密状態の市場が整理され始めた」と見るほうが実態に近いでしょう。
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参入障壁の低さが生んだ過当競争
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派遣事業は、他の業種と比べて参入障壁が低いビジネスです。
大規模な設備投資も不要で、「人を集められれば成立する」と考えられてきました。
その結果、
・異業種からの参入
・小規模派遣会社の乱立
が進みました。
しかし、参入しやすいということは、撤退もしやすいということでもあります。
競争が激しくなるほど、
・価格を下げないと案件が取れない
・利益率が下がる
・少しの環境変化で資金繰りが苦しくなる
という構造に陥ります。
これが、倒産が連鎖的に起きやすい土壌を作ってきました。
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同一労働同一賃金が与えたインパクト
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近年、派遣会社の経営に大きな影響を与えているのが「同一労働同一賃金」です。
厚生労働省が職種別の賃金目安を示すようになり、派遣社員の待遇は制度的に底上げされました。
これは、労働者保護の観点から見れば非常に重要な進展です。
一方で派遣会社側から見ると、
・賃金水準の実質的な下限が設定された
・派遣料金を自由に下げにくくなった
という側面もあります。
問題は、そのコスト増をすべて派遣先企業に転嫁できるとは限らない点です。
特に価格競争が激しい業界・職種では、派遣会社がコストを抱え込むケースも少なくありません。
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無期雇用派遣・教育コストが重くのしかかる
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2015年の派遣法改正以降、無期雇用派遣は着実に増えています。
雇用の安定性が高まった点は評価すべきですが、派遣会社にとっては固定費の増加を意味します。
さらに、
・教育・研修費
・採用広告費
・社会保険料
といったコストも年々増加しています。
人材を確保するためには、
「時給を上げる」
「福利厚生を充実させる」
といった対応が不可欠ですが、体力のない派遣会社ほど、その負担に耐えきれなくなります。
倒産理由の多くが「派遣不要」ではなく「採算割れ」であることは、ここからも明らかです。
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スキマバイトよりも脅威なのはAI・自動化
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最近では、スキマバイトやスポットワークが派遣業界の脅威として語られることがあります。
しかし、実務的に見ると、派遣と完全に競合しているわけではありません。
むしろ派遣業界に本質的な影響を与えているのは、AIや自動化の進展です。
たとえば、
・コールセンター業務のAI化
・事務作業の自動化
により、派遣社員が担ってきた仕事そのものが減少しています。
今後は、
「派遣で人を入れなくても業務が回る」
領域が確実に増えていくでしょう。
これは一時的な問題ではなく、構造的な変化です。
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派遣は不安定?変わりつつある世間のイメージ
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「派遣=不安定」
「派遣会社=中間搾取」
というイメージはいまも根強く残っています。
しかし実態を見ると、
・無期雇用派遣の増加
・正社員転職のしやすさ
などにより、派遣を「自ら選ぶ」人は確実に増えています。
派遣社員は、
・不本意型(本当は正社員になりたい)
・本意型(働き方を選択している)
に分けられますが、近年は本意型の比率が高まっています。
派遣会社に求められる役割も、
「単なる人の供給」
から
「スキルと働き方をマッチングする存在」
へと変化しているのです。
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社労士が考える|これからの派遣会社の生き残り条件
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派遣会社倒産の増加は、業界の終わりではありません。
むしろ、
「選ばれる派遣会社だけが残る」
フェーズに入ったと見るべきでしょう。
これから重要になるのは、
・法令遵守を前提とした労務管理
・派遣社員の定着と育成
・得意分野・専門領域の明確化
です。
規模の拡大よりも、「なぜ自社が選ばれるのか」を言語化できるかどうかが、生き残りを左右します。
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おわりに|倒産増加は業界健全化のサイン
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人手不足なのに派遣会社が倒産する。
一見すると矛盾した現象ですが、その実態は「市場の整理」と「役割の再定義」です。
派遣業界はいま、大きな転換点に立っています。
この変化を「危機」と捉えるか、「進化のチャンス」と捉えるかで、派遣会社の未来は大きく変わるでしょう。
制度・労務・人材戦略を正しく理解し、持続可能な経営を目指すこと。
それこそが、これからの派遣会社に求められる最大のテーマだと、社会保険労務士として強く感じています。
【参照記事リンク】
https://news.yahoo.co.jp/articles/d3700f0c0e2190858c01b280be7608eafa0dd458?page=1

