派遣事業を始めたばかりの企業や、これから派遣スタッフを増やしていきたい派遣会社から、よくいただくご相談があります。
それは──
「派遣元管理台帳って、そもそも何から書けばいいんですか?」
「フォーマットが多すぎて混乱する」
「法律で義務と聞いたけど、どのレベルまで作り込めばいいの…?」
派遣元管理台帳は、労働者派遣事業を行ううえで“必ず作成しなければならない”法定帳簿です。
そして、行政監査でも最優先でチェックされる“最重要書類”でもあります。
この記事では、初めて台帳を作る担当者でも理解できるよう、
●基礎知識
●記載項目の意味
●保存期間
●よくある誤解
●監査で見られるポイント
●運用のコツ
まで、社労士の実務経験をもとに丁寧に解説します。
初めてでも迷わない「派遣元管理台帳の教科書」として活用いただければ幸いです。
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1. 派遣元管理台帳とは?まず“役割”を理解するところから
派遣元管理台帳は、派遣労働者が
「どこで・どのような条件で・どれくらい働いたか」
を記録する帳簿です。
派遣元事業主は、派遣スタッフ1人につき1枚、必ず作成する必要があります。
これを作る目的は大きく3つ。
1) **就労実態の把握**
2.)**法令違反や条件不一致を防ぐための内部管理**
3.)**行政監査時の確認資料**
特に3つ目が重要で、監査時には契約書・就業条件明示書と並んで“最初に確認される”書類です。
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2. 法的根拠:労働者派遣法第23条による義務
派遣元管理台帳の作成義務は、労働者派遣法第23条に明記されています。
ここで必ず押さえてほしいのは、
**「短期派遣でも」「1日だけでも」「1名だけでも」必ず作る必要がある**
という点です。
台帳作成は派遣事業を行う上での最低限の義務であり、
これが整備されていないと
・行政指導
・改善命令
・許可更新におけるマイナスポイント
につながる可能性があります。
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3. 派遣元管理台帳の“必須記載項目”をわかりやすく解説
初めての方がつまずきやすいのは「何を書くのかよくわからない」という点。
台帳には以下のような項目が必要です。
【必須記載項目】
– 派遣労働者の氏名
– 派遣先名称・所在地
– 派遣期間
– 業務内容
– 派遣料金・賃金に関する事項
– 就業条件(勤務時間、休日、休憩など)
– 指揮命令者の情報
– 教育訓練の実施状況
– 福利厚生に関する事項
– 苦情処理の内容
一つ一つを見ると難しそうですが、実務では
「契約書」「就業条件明示書」「派遣先での実際の業務内容」
を整理することで自然と必要な情報が揃います。
ここで重要なのは、
**項目の省略は一切不可であること。**
行政監査では、これらが全部揃っているかどうかを細かく確認します。
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4. 初心者が特につまずく場面:記載漏れと更新漏れ
実際に支援現場で最も多い疑問がこちらです。
「台帳を作ったのだけれど、どこまで更新すればいいの?」
台帳で起きやすいミスは大きく2つ。
① 記載漏れ
特に派遣期間、就業条件、苦情処理の項目が漏れやすい。
② 更新漏れ
・派遣期間の延長
・派遣先の変更
・勤務時間の変更
・契約内容の変更
などがあった際、台帳を更新せずに放置してしまうケースが非常に多いです。
台帳は“作れば終わりの書類ではなく、動く書類”です。
変更があれば必ず反映する、という運用が必要になります。
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5. 派遣会社が抱きがちな誤解と注意点
特に多い誤解を、初めての担当者向けに整理します。
❌誤解①「短期だから台帳は不要」
→ 派遣期間の長さは関係なく、必ず作成が必要。
❌誤解②「同じ職場なら複数人を1枚で良い」
→ 人数に関係なく、1人ずつ作成。
❌誤解③「契約書があるから台帳は必要ない」
→ 契約書=派遣元と派遣先の契約内容
台帳=派遣労働者の就業実態
目的が異なる。
このような誤解が原因で台帳自体が整備されていない会社は、監査で最も指摘されやすくなります。
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6. 保存期間は3年|電子化は可能だが“ルールあり”
派遣元管理台帳の保存期間は、作成日から**3年間**。
紙でも電子でも構いませんが、電子化には注意が必要です。
特に NG なのは以下の3つ。
1. 必須項目がフォーマットに含まれていない
2. 更新履歴が残らない
3. 担当者が独自のフォーマットを作り、統一されていない
電子化は便利ですが、法律の要件を満たしていないケースが非常に多く、
行政監査で修正指示が出ることもあります。
初めて電子化する場合は「必須項目が漏れないテンプレ」を作るのが鉄則です。
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7. 行政監査ではここを見る|チェック項目を公開
社労士として監査対策を支援する中で、行政官が特に見ているポイントがこちら。
– 台帳の必須項目が揃っているか
– 契約書・就業条件明示書・勤怠実績と一致しているか
– 更新漏れがないか
– 苦情処理欄が空欄のままになっていないか
– 電子化の場合、フォーマットが法令に適合しているか
監査では「実態との整合性」が最も重視されます。
台帳に書いてある内容が実際と違う──
これは最も指摘されやすい重大事項です。
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8. 初めてでも失敗しない台帳運用のコツ
初心者でもスムーズにできる、運用のポイントをまとめます。
▷運用が安定するルール
– 契約更新や就業条件変更があれば、その場で台帳を更新
– 契約書・就業条件明示書と必ずセットで確認
– 苦情がなかった場合も「苦情なし」と記録
– 更新日時や担当者を必ず残す
– 電子フォーマットを社員全体で統一する
「後でまとめてやる」は失敗の原因になるので、台帳は“都度更新”を徹底しましょう。
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9. 社労士が見た、運用がうまい会社の特徴
台帳管理がきちんとしている会社には共通点があります。
1) 担当者が明確に決まっている
2) 台帳と契約書の確認フローを仕組み化している
3) 変更があれば即時反映
4) 電子フォーマットが統一されている
5) 定期的に社内監査を実施している
逆にトラブルの多い会社は、管理が担当者任せとなっており、引き継ぎで崩れる傾向があります。
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10. まとめ:台帳の整備は“派遣会社の信用”をつくる
初めて派遣元管理台帳を作成する方に伝えたいのは、
台帳は単なる義務ではなく“派遣会社の品質を左右する基盤”だということ。
・台帳が整っている会社は派遣先から信頼される
・スタッフ対応がスムーズになり苦情も減る
・監査にも強くなる
・事業運営が安定する
台帳を整えることは、派遣会社の“信用づくりそのもの”です。
初めての担当者の方も、まずは基本をしっかり押さえ、
自社の運用に合った管理方法を構築していきましょう。
必要であれば専門家のチェックを受けることで、
「自社の運用で本当に大丈夫か?」という不安を解消し、
安心して派遣事業を展開できる体制をつくれます。
台帳は、派遣事業の根幹。
初めての一歩を、丁寧に踏み出していきましょう。

