派遣社員の「雇用契約書」と「就業条件明示書」はどこが違う?混同しやすい2つの書類を徹底解説【保存版】

派遣社員の「雇用契約書」と「就業条件明示書」はどこが違う?混同しやすい2つの書類を徹底解説【保存版】

派遣社員として働くと、入社時や配属時に「雇用契約書」と「就業条件明示書」という2種類の書類を受け取ります。しかし、この2つの違いを正確に理解している方は多くありません。とくに初めて派遣として働く人や、複数の派遣先を経験してきた人ほど、「似たような書類だから同じ内容なのでは?」と混乱しがちです。

実際には、両者はまったく異なる役割を持ち、法律上の根拠も違います。どちらも重要な書類であり、内容を理解していないと、給与・残業・契約更新などで思わぬトラブルにつながる可能性もあります。この記事では、派遣の実務に精通した専門的視点から、「雇用契約書」と「就業条件明示書」の違いをわかりやすく解説し、実務上の注意点やよくある誤解、専門家の支援内容まで丁寧にまとめます。

結論

結論から述べると、「雇用契約書」は派遣会社と派遣社員の“雇用そのもの”を規定する契約書であり、「就業条件明示書」は派遣先で実際に働く際の“具体的な労働条件”を明示した書面です。 

雇用契約書は派遣元と結ぶ恒常的な契約で、雇用主は派遣会社。一方、就業条件明示書は派遣先ごとに作成され、派遣先が変われば毎回内容が変わります。この両方が揃うことで、派遣という働き方が成立します。

解説

まず、雇用契約書は労働基準法・労働契約法に基づき、雇用主である派遣会社が労働者に対して示すべき基本契約書です。ここには、契約期間、雇用形態(有期・無期)、給与の支払方法、社会保険の取扱い、解雇・退職のルール、就業場所が変更となる可能性など、雇用関係共通の項目が記載されます。派遣先がどこであっても、これらの条件は「派遣会社との契約」として継続します。

次に、就業条件明示書は労働者派遣法により交付が義務づけられた書面で、派遣先で働く際の具体的条件が明記されます。たとえば、勤務時間、休憩、時間外労働の有無、休日、派遣料金と派遣社員の賃金の関係(いわゆる同一労働同一賃金の説明)、業務内容、派遣期間、派遣先の指揮命令者など、派遣先で働くために必要な情報が詳細に示されます。派遣先が変わるたびに新しく作成されるため、内容を毎回チェックすることが非常に重要です。

このように、雇用契約書と就業条件明示書は目的も法的根拠も異なるため、しっかり区別して理解する必要があります。

よくある誤解

派遣社員から多く寄せられる誤解の一つが、「就業条件明示書の内容がそのまま雇用契約書に反映されている」というものです。実際には、雇用契約書は派遣会社との契約であり、派遣先の事情に左右されるものではありません。たとえば給与の締め日や支払日、社会保険加入のタイミング、有給休暇の付与などは派遣会社の規定に基づくため、派遣先での説明だけを信じてしまうとトラブルになる可能性があります。

また、「派遣先と直接労働契約を結んでいる」という誤解も依然として多く見られます。しかし、派遣社員の雇用主はあくまで派遣会社です。業務上の指揮命令は派遣先が行いますが、給与支払い、契約更新、トラブル対応の責任は派遣元にあります。この仕組みを理解していないと、相談窓口を誤ってしまったり、権利を正しく主張できなかったりする恐れがあります。

さらに、「就業条件明示書は後からでも確認すればよい」という考え方も誤りです。派遣法では、就業条件明示書は就業開始前に交付される必要があり、口頭説明だけでは不十分です。書面で確認しないまま勤務を開始すると、時間外手当や交通費などで不利益を受けるリスクがあります。

実務での注意点

実務上、派遣社員が特に注意すべき点は次のようなものです。

1. 雇用契約書と就業条件明示書に矛盾がないか 

どちらも重要な書類ですが、内容が一致していないケースも見られます。特に賃金や休日に関する部分はトラブルの温床となるため、必ず両方を照合しましょう。

2. 派遣先が変わるたびに新しい就業条件明示書が発行されているか 

派遣先に配属される前に必ず新しい書類を受け取る必要があります。派遣先が変わるのに書面が更新されていない場合は要注意です。

3. 時給や手当の扱いが派遣会社の規定と一致しているか 

派遣先の担当者の説明と派遣会社の制度が異なる場合があります。特に交通費や残業代、深夜手当などは書面の記載が優先されます。

4. 契約更新時に変更点が必ず書面で明示されているか 

更新のたびに条件が微妙に変わる場合があります。口頭だけではなく、必ず書面で確認することが大切です。

5. トラブル時は派遣先ではなく派遣会社に相談する 

派遣先の担当者に相談しても解決しないことが多く、最終的には派遣元が調整する役割を持っています。

士業としての支援内容

社会保険労務士は、派遣会社・派遣社員の双方に対して幅広いサポートを提供できます。派遣会社向けには、労働契約書や就業条件明示書の整備、法令に沿った運用ルールの構築、同一労働同一賃金への対応など、制度づくり全般を支援します。

一方、派遣社員側の相談にも対応可能です。書類の読み方、契約内容への不安、派遣会社とのトラブル対応など、第三者として客観的なアドバイスを提供できます。とくに、契約内容の妥当性を確認したい場合や、派遣法関連の制度に不安がある場合には、専門家に相談することで安心して働くことができます。

まとめ

派遣社員が受け取る「雇用契約書」と「就業条件明示書」は、それぞれ役割も法律上の位置づけも異なる重要な書類です。前者は派遣会社との雇用関係を、後者は派遣先での具体的な働き方を示すための書類であり、どちらも理解しておくことが快適な働き方につながります。

内容に不一致がある場合や不明点がある場合は、すぐに派遣会社に確認することが大切です。また、不安がある場合は専門家に相談することで、トラブルを未然に防ぎ、安心して就業を続けることができます。