人材派遣業を始めようとする方や、すでに派遣会社を運営している経営者の方から「キャリアアップ計画書は必ず作らなければならないのか?」という質問を多くいただきます。特に労働者派遣事業の許可申請や更新手続きの際に書類一覧を見て、不安に感じるケースが少なくありません。また、規模が小さい会社や登録スタッフが少ない場合でも必要なのか、という点もよくある疑問です。
結論:キャリアアップ計画書は原則として必須です
結論から言えば、労働者派遣事業を行う派遣会社にとって、キャリアアップ計画書の作成は原則として必須です。労働者派遣法では、派遣元事業主に対して、派遣労働者のキャリア形成支援を行うことが義務付けられています。その具体的な内容を明確にしたものが「キャリアアップ計画書」です。
許可申請時には、この計画書の提出が求められます。また、事業開始後も計画に基づき段階的・体系的な教育訓練を実施する必要があります。つまり、単なる形式的な書類ではなく、実際の運用が前提となる重要な書類なのです。
なぜ義務なのか?制度の背景と具体的内容
キャリアアップ計画書が義務付けられている背景には、派遣労働者の雇用の安定と能力向上を図るという政策目的があります。派遣労働者は雇用が不安定になりやすい側面があるため、派遣元が責任をもって教育訓練やキャリア形成支援を行うことが求められています。
計画書には、対象となる派遣労働者の範囲、実施する教育訓練の内容、実施時期、方法、キャリアコンサルティングの体制などを具体的に記載します。特に無期雇用派遣労働者だけでなく、有期雇用の派遣労働者についても段階的な教育訓練を行うことが求められる点は重要です。
よくある誤解:小規模事業者なら不要?
「登録スタッフが少ないから不要では?」「事務系だけなので特別な訓練は必要ないのでは?」といった誤解も多く見られます。しかし、派遣労働者が1人でもいれば、原則としてキャリアアップ計画書は必要です。
また、職種が事務系や軽作業中心であっても、情報セキュリティ研修やビジネスマナー研修、スキル向上研修など、職務に応じた教育訓練を体系的に計画する必要があります。「とりあえず年1回研修を実施している」だけでは、法の趣旨を満たしていない可能性があります。
実務での注意点:形だけでは不十分
実務上の大きな注意点は、「作っただけ」で終わらせないことです。労働局の指導や監査の際には、計画書と実際の研修実施記録との整合性が確認されます。実施日、参加者、研修内容をきちんと記録し、計画通りに運用しているかが重要になります。
また、許可更新時には、過去の運用状況もチェック対象となります。計画と実態がかけ離れている場合、改善指導を受ける可能性もあります。助成金の活用を考えている場合にも、計画書の内容と実績の整合性は極めて重要です。
専門家によるサポート内容
社会保険労務士は、派遣業許可申請に必要なキャリアアップ計画書の作成支援を行うことができます。単にひな形を埋めるのではなく、事業内容や派遣予定職種に応じた実効性のある計画を設計することが重要です。
また、運用面についてのアドバイスや、更新時のチェック、労働局対応のサポートなども可能です。法改正への対応や助成金との整合性確認も含め、継続的なサポートを受けることでリスクを抑えることができます。
まとめ
キャリアアップ計画書は、派遣会社にとって原則必須の重要書類です。単なる形式的な提出書類ではなく、派遣労働者の教育訓練とキャリア形成を支える実務上の基盤となります。小規模事業者であっても例外ではありません。
許可申請や更新のタイミングだけでなく、日常の運用体制を整備することが将来的なリスク回避につながります。不安がある場合は、早めに専門家へ相談し、自社の実態に合った計画書を整備しておくことをおすすめします。

