こんにちは、社会保険労務士の泉 文美です。
今回は、厚生労働省が令和6年に公表した
「就業形態の多様化に関する総合実態調査」の結果をもとに、
派遣会社の皆さまにとって重要なポイントをお伝えします。
この調査は、全国約17,000の事業所と約23,000人の労働者を対象に行われ、
企業側・労働者側の双方から“働き方の今”を浮き彫りにしたものです。
結果を一言でまとめるなら――
**「人手不足を背景に、非正規人材の活用が定着し始めている」**
ということです。
そしてその中で、派遣会社が果たすべき役割が確実に変わりつつあります。
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## ◆ 「正社員を確保できない」が41.0%に
まず注目すべきは、企業が正社員以外の労働者を活用する理由です。
最も多かったのが「正社員を確保できないため」(41.0%)。
これは前回調査(38.1%)より増加しており、人手不足の深刻化が明確に表れています。
特に地方や中小企業では、採用広報を強化しても応募が集まらず、
「派遣・契約・パート」で現場を回すケースが増えています。
もはや“非正規”という言葉が示す「一時的・補助的」な存在ではなく、
**企業経営を支える中心的な人材層**として認識され始めているのです。
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## ◆ 非正規活用が進む現場の実態
調査では、3年前と比べて「非正規比率が上昇した」と答えた事業所が15.7%。
特に増えた雇用形態は、
「パートタイム労働者」(66.2%)と「嘱託社員(再雇用者)」(22.4%)。
現場を支えるベテラン層や、
家庭や地域活動と両立したい短時間勤務者が増えています。
この傾向は、企業の「柔軟な働き方」を受け入れる姿勢が
少しずつ浸透してきた証拠でもあります。
とはいえ、多くの企業では“体制整備”が追いついていません。
非正規比率が高まるほど、
雇用管理・教育・評価・契約更新などの複雑さが増すからです。
ここで派遣会社がサポートに入れる余地が広がっています。
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## ◆ 労働者側の意識も変化
非正規で働く理由の1位は、「自分の都合のよい時間に働けるから」(40.1%)。
特に女性・中高年層ではこの回答が突出しています。
一方で、派遣労働者に限ると
「正社員として働ける会社がなかったから」という理由が最も多く、
働き方の選択には「自由」と「制約」が同居しています。
つまり、
企業は「人手が足りないから非正規を活用」、
働く人は「生活に合わせて働けるから非正規を選択」。
この2つの動機にはわずかなズレがあります。
そしてこの“ズレ”をどう埋めるかこそ、
派遣会社の腕の見せどころです。
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## ◆ 派遣会社が果たすべき「橋渡し」役
今後の派遣会社には、
単に「人を送る」存在ではなく、
「人と企業をつなぐ雇用デザイン企業」としての姿勢が求められます。
そのためには、次の3つの視点が欠かせません。
1️⃣ **即戦力ではなく“成長力”でつなぐ**
企業が求めるのは短期的な戦力ですが、
長期的には“育てる前提で関わる”ことが信頼につながります。
派遣スタッフのスキルアップ支援やリスキリングを仕組み化することで、
派遣元・派遣先・本人の“三方良し”を実現できます。
2️⃣ **「派遣→直接雇用」への道筋を整える**
正社員を確保できない企業が増える今、
派遣スタッフからの直接雇用は双方にメリットがあります。
派遣会社がその橋渡しを担うことで、
派遣先との関係がより強固になります。
3️⃣ **「働きやすさ」を設計する**
勤務時間・場所・契約期間の柔軟さ、
家庭や副業との両立――。
派遣会社が企業と一緒に“働きやすい職場設計”を行うことで、
より持続可能な雇用関係が築けます。
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## ◆ 「仕事のやりがい」こそ満足度の鍵
調査によれば、正社員が最も満足しているのは「雇用の安定性」(66.3ポイント)、
非正規では「仕事の内容・やりがい」(63.3ポイント)。
つまり、非正規の方は「仕事内容そのもの」に充実感を感じやすい一方、
安定性に不安を抱えています。
派遣会社ができるのは、その不安を“安心”に変えること。
・契約更新や次の仕事に関する早めの案内
・定期的な面談・フォロー
・スキルやキャリア相談の機会づくり
こうした地道なサポートが、
「この会社で働き続けたい」というロイヤリティにつながります。
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## ◆ 法的な留意点:信頼はコンプライアンスから
就業形態が多様化するほど、法的リスクも高まります。
特に派遣会社にとって注意すべきは以下の3点です。
- **派遣法上の期間制限(原則3年)**
- **同一労働同一賃金への対応**
- **派遣先への労働条件明示・情報提供の義務**
これらを怠ると、派遣先企業にも不信感を与えかねません。
反対に、労務コンプライアンスを徹底している派遣会社は、
「安心して取引できる」と高く評価されます。
社労士としては、派遣契約の整備、労働条件通知の適正化、
法改正への迅速な対応などをサポートすることで、
派遣会社の信頼性を高めるお手伝いができます。
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## ◆ 今こそ「人を送る」から「雇用をつくる」へ
人手不足は当面続きます。
ですが、これは派遣会社にとって“ピンチ”ではなく“チャンス”です。
企業の採用難が深刻化する中で、
派遣会社は「雇用のハブ」としての存在感を高められます。
・企業の採用課題を解決するパートナー
・働く人のキャリアを支える伴走者
・労務リスクを管理する専門家との連携窓口
この3つの機能を兼ね備えた派遣会社こそ、
今後の市場で選ばれる存在となるでしょう。
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## ◆ 社労士からのメッセージ
社労士の立場から見ると、
「就業形態の多様化」は制度や手続き面の複雑化を伴います。
だからこそ、労務管理の専門知識と現場感を持ったサポートが不可欠です。
派遣会社の皆さまには、
・法令遵守の精度を上げる
・スタッフのキャリア支援を仕組み化する
・企業への提案力を磨く
この3つを意識していただきたいと考えています。
労働市場が変化する今こそ、
「派遣会社×社労士」の連携が最大の強みになります。
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## ◆ まとめ
今回の調査結果から見えてきたのは、
「正社員を確保できない」という危機と同時に、
「働き方の選択肢が広がる」という希望です。
派遣会社にとって、
これは新しいビジネスチャンスの到来でもあります。
“人を送る”だけではなく、
“人と企業の未来をデザインする”。
そんな姿勢で、次の一歩を踏み出していきましょう。
今日の内容が、皆さまの現場でのヒントになれば幸いです。
――社会保険労務士 泉 文美
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