派遣業界を取り巻く環境は年々厳しさを増し、「透明性」や「説明責任」に対する要求が高まっています。
その中でも特に重要視されているのが **「マージン率等の情報公開制度」** です。
制度そのものはシンプルに見えますが、実務での対応は意外と複雑です。
数字の整合性、教育訓練の扱い、サイト公開の仕方など、細かい落とし穴が多く、
行政指導や許可更新の際に「ここが問題です」と指摘されてしまうケースが後を絶ちません。
本記事では、社会保険労務士として多くの派遣会社を支援してきた経験から、
**マージン率公開で間違えないための7つの注意点** を、
5,000文字で丁寧に解説します。
後半にはすぐ使える **実務チェックリスト** もつけていますので、
貴社の情報公開の見直しにお役立てください。
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1. マージン率公開制度とは|派遣会社に求められる「透明性」の本質
マージン率公開制度は、派遣労働者や派遣先企業が、
「派遣料金の内訳」や「派遣会社の運営状況」を理解しやすくすることを目的とした制度です。
背景として、
・派遣料金と賃金の関係が不透明
・派遣会社がどれくらい教育訓練に投資しているのか見えにくい
・情報不足による不信感やトラブルが発生
といった課題が長く指摘されてきました。
そのため、制度は単なる「義務」ではなく、
**派遣会社の健全性・信頼性を示すための大事な指標** として機能しています。
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2. マージン率=利益率ではない|誤解を避けるための明確な説明が必要
まず押さえておくべき重要ポイントは、
**「マージン率 = 派遣会社の利益」ではない** ということです。
計算式は以下のとおりです:
**(派遣料金 − 派遣労働者の賃金)÷ 派遣料金 × 100**
しかし、この差額には、
・社会保険料の事業主負担
・教育訓練費
・営業人件費
・管理部門の給与
・オフィス賃料
・交通費補填
・システム費用
など、派遣会社の運営に必要な多くの経費が含まれています。
そのため、マージン率の数字だけで評価されると、
「高いから悪い」「低いから良い」といった誤解が生まれやすいのです。
派遣会社としては、公開するだけではなく、
**数字の意味を丁寧に説明できる状態** をつくっておくことが非常に重要です。
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3. 公開が義務付けられる項目|マージン率以外にも重要情報が多数
マージン率公開制度では、以下の項目を公開する義務があります。
・派遣労働者数
・派遣先数
・派遣料金の平均額
・派遣労働者の賃金の平均額
・マージン率
・教育訓練の内容・実績
・福利厚生の内容
特に **教育訓練** は法定義務であり、ここがきちんとしていないと、許可更新で指摘される可能性が高くなります。
よくある不備としては、
・訓練実施記録が不足
・内容が法定基準に満たない
・計画書と実績が一致していない
などがあります。
教育訓練はただ公開するだけでなく、
**証跡の整理と実施内容の整合性** が非常に重要です。
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## 4. ウェブサイトでの公開|最も落とし穴が多い領域
実務で最も多い問題が、ウェブサイト公開に関するものです。
● よくある失敗
1. 公開ページが見つけにくい (厚生労働省「人材サービス総合サイト」を推奨)
2. 古い年度のまま更新されていない
3. PDFのリンク切れ
4. 公開項目が足りない
5. スマホで見づらい
行政の調査では「公開されているか」「アクセスしやすいか」も確認されます。
特に最近は、**人材サービス総合サイトへ掲載されているか** が問われる傾向があります。
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5. 数字の整合性チェック|許可更新で最も指摘されやすいポイント
マージン率公開と許可更新は密接に関連しています。
よくある指摘例は次のとおりです。
● 公開内容と事業報告書の数字が一致していない
最も多く見られるミスです。
・労働者数
・派遣先数
・賃金
・派遣料金
など、少しでもズレがあると整合性の欠如として指摘されます。
● 管理台帳と数字が合わない
社労士として台帳をチェックすると、
「稼働時間」「賃金計算」「社会保険の加入状況」の齟齬が見つかるケースが多いです。
整合性を取るためには、
**台帳 → 給与計算 → 事業報告書 → 公開情報**
という一連の流れを統一して管理する必要があります。
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6. 行政指導のリスク|更新漏れ・誤記載は必ずチェックされる
行政指導で多いのは次の4つです。
1. 公開更新の遅れ(旧データのまま、人材サービス総合サイトへ未掲載)
2. 公開項目の不足
3. 数字の整合性欠如
4. 教育訓練の不備 (教育訓練実施日時、受講者の感想の記録がない、など)
特に更新漏れは簡単なように思えますが、
実際には「年度の切り替え忘れ」「サイト担当者の不在」などで発生しやすく、
改善指導に至ることも少なくありません。
些細に見える部分ですが、派遣許可の審査では非常に重視されます。
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7. マージン率等の情報公開制度を“強み”に変える方法
マージン率等の情報公開制度は義務でありながら、
**採用・営業で大きなアドバンテージ** になります。
● 教育訓練の実績を丁寧に見せる
求職者から「安心できる会社」と見られやすくなり、採用力が向上します。
● 福利厚生を分かりやすく示す
同じ派遣料金でも、「この会社のほうが安心」と判断されます。
● マージン率の“背景”を説明する
適正な運営のための経費を明示することで、信頼度が上がります。
公開制度は、派遣会社の「誠実さ」や「運営力」を示す強力なツールになります。
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8. 実務に使えるチェックリスト|今日から見直せる項目一覧
以下のチェック項目を使えば、
貴社のマージン率公開が適正か、すぐに確認できます。
●【数字・実務】
□ 管理台帳の記録は正確か
□ 賃金データと台帳が一致しているか
□ 事業報告書と公開内容にズレがないか
□ 教育訓練の実績を証明できるか
●【ウェブサイト】
□ 公開ページは2クリック以内で到達できるか
□ 公開項目はすべて揃っているか
□ 年度ごとの更新ができているか
□ PDF等のリンク切れがないか
●【説明・運用】
□ マージン率の内訳を説明できる資料があるか
□ 相談を受けた際の対応フローが明確か
このチェックを行うだけでも、行政リスクは大きく軽減できます。
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9. 社労士が支援できるポイント|整合性・法令・実務のすべてをサポート
社会保険労務士は、
・給与計算
・社会保険加入
・台帳整備
・事業報告書
・許可更新手続き
といった複数領域にまたがる実務を横断的に確認できるため、
マージン率等の情報公開制度とは非常に相性が良い支援ができます。
特に、
「数字が合わない理由が分からない」
「教育訓練の整備が不安」
などの相談は、日々多く寄せられるテーマです。
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10. まとめ|派遣会社が間違えないための3つの行動
最後に、今日から実践できる3つの重要ポイントをまとめます。
① 数字の整合性を徹底する
台帳 → 給与 → 報告書 → 公開情報 の一貫管理が必須。
② ウェブ公開を見直す
見つけやすさ・更新時期・リンクの不備を必ずチェック。
③ 教育訓練の証跡を整備
記録がない教育訓練は「実施していない」と判断されます。
マージン率公開制度は、派遣会社の信頼性を高める大きなチャンスです。
しっかり整備することで、採用・営業・行政対応のすべてに良い影響が生まれます。
不安な方は、早めに専門家へ相談し、
リスクのない健全な運営体制を作り上げていきましょう。
※参照)厚生労働省「人材サービス総合サイト」

